PjAニュース
No. 002

下﨑 寛

家屋評価コラム

札幌地裁 令和5年10月4日、小樽市の家屋の固定資産税評価額は損耗減点補正を行っていないので、その評価額は違法と判決した事例である。

要旨

平成30年、A社は小樽市が行った公売により、同市の土地及び家屋を8,900万円で取得した。当該家屋は昭和63年に建築された4階建の研究施設(以下「X家屋」という)で、平成13年頃から使用されておらず、窓ガラスが割れ、カビが発生するといった状態であった。

公売時のX家屋の鑑定評価額は3,850万円であったが、小樽市はX家屋の固定資産評価額を3億円とした。

そこで令和3年、A社は小樽市固定資産評価審査委員会に過大評価として審査を申出したが、小樽市はこの申出を棄却したので、令和4年にA社は、X家屋は約17年間使用されることなく放置されており、損耗に評価減点事情があるのにもかかわらず、その減価を認めずに固定資産税評価をしたのは違法であるとして価格決定の取り消しを求め提訴した。

札幌地裁判決(令和5年10月4日)によれば、17年間利用していなかったX家屋は、内装材の剥がれ等の損傷が著しく、全体として維持管理状況は非常に劣ること、研究所として使用することが不可能の状態にあるので、通常の維持管理の範囲を超える損耗が明らかに生じていると認定し、これらの事情を考慮し「損耗減点補正率」を適用せず、固定資産税評価額を3億円と評価した小樽市の評価は違法であるとし、小樽市の固定資産税評価額を取消した。

小括

この判決では、具体的な評価額の算出は困難としながらも、このように災害等により損耗が激しいものは、役所に評価減額を申請して認められるケースが多い。

申出しなければ認めてくれないので、納税者としては、是非とも主張したいものである。

なお、家屋の減価については、通常の経年による補正として「経年減点補正率」があり、耐用年数により減価することとなっている。しかし、X家屋のように、17年以上利用せず損耗が著しい家屋については、「経年減価補正率」ではなく、「損耗減点補正率」により再評価すべきであろう。

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